ママのお悩み相談室

日頃ご相談の多いものについてわかりやすく説明します。

感染性胃腸炎について

幼い頃、母が「せきりきんをたべた子」という紙芝居を買ってくれました。

兄妹が親の言うことを聞かずに、不衛生な状況でアイスキャンディー(「せきりきん」が付いている)を買って食べたところ、腹痛になり、血便が出る。つらい入院生活を送り、その後は言うことを聞くようになるというお話です。

私がそれで良い子になったかどうかは別にして、赤痢菌が恐ろしいということは50年たっても忘れていません。

戦後は非常に多かった赤痢は衛生水準の向上により激減しました。赤痢等、感染性胃腸炎の原因は様々で、環境等によってもその傾向は変わります。

感染性胃腸炎とは、どのように発症するのですか?

胃や腸に病原体が侵入して、炎症を起こして発症します。急性胃腸炎とも呼びます。発熱、嘔吐、腹痛、下痢、時に血便等の症状が見られます。

風邪のように人から人にうつる場合と、汚染された食べ物を摂取して発生する食中毒の場合(時に集団発生する)があります。

原因となる病原体にはどんなものがありますか?

急性胃腸炎は、ノロウイルス、ロタウイルスといったウイルスが原因のことが90%と言われています。白色か黄色っぽい水分の多い下痢が1日10数回見られます。細菌性より感染力が強く、かかりやすいのですが、実は経過が早く、軽症な場合も多いです。

「ノロは怖い」という印象を持たれている方も多いと思いますが、感染はしやすい(汚染食品を介して集団発生することもある)けれど、1,2日程度の発熱、嘔吐、3,4日程度の下痢で回復する場合がほとんどです。

ロタウイルスも感染力が強く、ロタによる下痢症は白色で酸っぱいにおいが特徴です。乳児がロタに感染すると、抵抗力が弱いため嘔吐、下痢で脱水症になりやすく、注意が必要で、現在はワクチンがあります。

細菌による感染性胃腸炎は、夏に多く見られます。暑い夏場に食材で細菌が増殖しやすいからです。

ウイルス性に比べて腹痛が強く、発熱、血便も多く見られます。サルモネラ菌、カンピロバクター、病原大腸菌等が有名です。

サルモネラ腸炎は、サルモネラ菌に汚染された鶏卵、鶏肉等を食べることによる経口感染で、発熱、嘔吐、下痢、腹痛、時に血便になります。乳幼児、高齢者、免疫力が弱い人は、血液や骨、中枢神経系まで菌が入り込む場合があります。犬、猫、亀等のペットから感染することもあります。

カンピロバクター腸炎も、菌に汚染された鶏肉等を食べることによって感染する代表的な細菌性食中毒です。

病原大腸菌性腸炎は、病原性のある大腸菌が原因です。中でもO157のように毒素を産生する大腸菌は腸管出血性大腸菌感染症を引き起こし、時に尿毒症や脳症等を併発します。

ウエルシュ菌は下痢、腹痛を起こします。汚染された肉類、魚介類を使った煮込み料理(カレー等)が原因となることが多いようです。この菌は熱に強く、他の菌と違って加熱調理しても死滅しません。また酸素のない状態を好むため食品の内部で増殖します。菌が大量に増殖した食品を食べることで発症するため、調理後は早めに食べ切るか、すぐに冷蔵することが大事です。

どのように治療するのでしょうか。

下痢をしたり、吐いたりすると水分が奪われます。脱水症を防ぐため、軽症なら経口補液、中・重症なら点滴補液が重要です。嘔吐がひどい場合は鎮吐剤を、腸内細菌の乱れを修復するために整腸剤を使用することがあります。

ミルクを飲んでいる乳児で下痢が長引くと、乳糖を消化する酵素が小腸粘膜から十分に出なくなるため、乳糖分解酵素を投与したり、無乳糖ミルクへ変更したりします。

下痢は有害なものを排出する体の防御反応と考えられます。下痢止めの薬、細菌性腸炎に対する抗生剤は、ウイルスや細菌の腸管からの排除を長引かせる等の理由から基本的に使用しません。

院長のコラムが毎号紹介されている【母の友】の『こども健康相談室』より

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