ママのお悩み相談室

日頃ご相談の多いものについてわかりやすく説明します。

こどもの糖尿病について

糖尿病とは、インスリンの作用不足により血糖値が上がり、尿中に糖が出現する病気です。

糖尿病には、膵臓でインスリンをつくることができない1型糖尿病(以後1型)と、インスリンの量が少なかったり、うまくインスリンが働かなくなる2型糖尿病(以後2型)があります。子どもに多いのは1型で、10歳未満ではほとんどが1型です。

インスリンはどのような働きをしているのですか?

ブドウ糖が細胞の中に入ってエネルギーとして利用されるためには、膵臓(β細胞)から分泌されるインスリンが必要です。(中学や高校の生物の授業で、炭水化物→ブドウ糖→解糖系→TCA回路、エネルギー産生、なんて試験前に勉強したことなんとなく覚えている人いませんか?)

食事をすると、一般の人では、①炭水化物は胃や腸で分解されブドウ糖となり、小腸から吸収さて血液に入る。②血糖値が上昇する。③膵臓からインスリンが分泌される。④インスリンによりブドウ糖は筋肉、肝臓の細胞に入ってエネルギー源になります。

ところが、1型の場合①〜②は同じ。③血糖が上昇しても膵臓からインスリンが分泌されない。④血糖はどんどん増えて(高血糖)、腎臓からブドウ糖が尿中に出る(尿糖陽性)。⑤ブドウ糖は筋肉、肝臓に入らずエネルギーを作れない(疲れやすい)。⑥代わりに体内の脂肪やタンパク質を分解してエネルギーを作りだす(やせてくる)。⑦脂肪が分解される時ケトン体が産生される。

どのような人が糖尿病になってしまうのですか?

1型は、遺伝因子とウイルス感染等の関与により自己免疫反応が起こり、これが膵臓のインスリンをつくるβ細胞を破壊することで発症します。

2型は、食習慣の偏りや運動不足等の生活習慣による肥満がインスリン抵抗性を引き起こし発症します。

糖尿病になるとどのような症状がよくみられますか?

初発症状としては、疲れやすい、多飲多尿、夜尿、体重減少が主な症状です。糖尿病発症に気がつかれずいると、糖尿病性昏睡(糖尿病性ケトアシドーシス)を起こすことがあります。

インスリン自己注射治療って?

1型では自分のインスリン分泌がなくなるので、インスリンの生理的な分泌に近くなるように(持続的な基礎インスリン分泌と食後の高血糖に合わせたインスリン分泌)、生涯にわたりインスリンを補充することが必要です。

そのためには、自分で血糖値を1日頻回に測定し、血糖値に合わせてインスリン製剤を自己で注射(皮下注射)していきます。

インスリン製剤には、超速効型(投与後30分以内に効果が発現)と、持効型(投与後ゆっくりと24時間前後効果が持続)があります。

投与方法には、ペン型注射器による1日4回(毎食前に超速効型、眠前に持効型)の皮下注射法と、インスリンポンプによる持続皮下注法があります。

小さなお子様でも、糖尿病サマーキャンプ等に参加して自分で何でもやっている他の子を見ながら、自己血糖測定や自己インスリン注射ができるようになっていきます。

食事療法

1型は、食生活の乱れや運動不足で発症したわけではありません。カロリー制限を行う必要ははく、年齢に応じた1日のカロリー摂取量を決め、3大栄養素バランスを保ちます。食事の炭水化物の量に合わせてインスリン量を調節していく方法もあります(カーボカウンティング)。

2型は、カロリー制限食が基本になります。最近は糖質制限食が話題になっていますが、成長期の子供に偏った食生活は好ましくありません。

注意すべきこと

インスリン治療中に注意することは低血糖症です。いつもより運動量が多い、食事を抜いた、食べる量が少なかった時等は、インスリンが効きすぎて血糖値がさがりすぎてしまうことがあります。強い空腹感、顔面蒼白、手足の震え、冷感、頭痛、めまいなどの症状が出現し、糖分を補給するなど早めに対応しないと、意識消失、けいれんを引き起こします。

勝手にインスリン投与をやめてしまったりわすれたりしてしまうと、初発時にみられた様な糖尿病性昏睡をひきおこしてしまうことがあります。

糖尿病発症から罹患期間が長くなると、血糖コントロールが悪かった人は、網膜症、腎症、神経障害等の合併症をひきおこしやすくなります。

院長のコラムが毎号紹介されている【母の友】の『こども健康相談室』より

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