ママのお悩み相談室
日頃ご相談の多いものについてわかりやすく説明します。夏かぜについて
冬から春にかけてインフルエンザが猛威を振るいますが、暑くなってくると、今度は「夏かぜが流行ってきました」などと言われるようになります。
一般的に夏かぜとは、高温多湿の夏の環境を好むエンテロウイルスとアデノウイルスによる感染症を指します。エンテロは「腸管」を、アデノは「のど」を意味する言葉で、ウイルスは腸やのどで増殖した後、血液を介して標的とする場所に移動し症状を起こします。
小さい子どもは毎年のように夏かぜをひきますが、これはエンテロウイルス、アデノウイルスともに数十種類もの型があり、1つの型に感染してもその免疫が他の型には通用せず感染してしまうからです。
「夏かぜ」にはどのような種類がありますか?
代表的なものとして、プール熱、ヘルパンギーナ、手足口病があります。咳、鼻汁が主症状の普通のかぜとはちょっと症状が異なります。
プール熱は、咽頭結膜熱の別名です。アデノウイルスが原因の感染症で、発熱、咽頭炎、結膜炎が主な症状です。プールの水の塩素殺菌が不十分な時代に、水を介して子どもたちに次々と感染し、熱が出て、目が真っ赤になったことから、プール熱と呼ばれていました。
発熱は高熱のことが多く、四日前後続きます。ウイルスが原因なので抗生剤は効果がありませんが、のどの奥の両わきにある扁桃に白苔(白い膿のようなもの)が付く症状が、細菌によるのどのかぜ、扁桃炎に似ているため鑑別が難しく、以前は抗生剤が投与されてしまうこともありました。最近は抗原検査キットが普及し、のどからウイルスを迅速に検出して診断できるようになっています。
感染性が強く接触感染もしますから、手洗いは厳重にして、症状がおさまっても二日間は集団生活には戻れません。
ヘルパンギーナは、エンテロウイルス群(コックサッキーA群、B群、エコーウイルス等)による感染症で、発熱、口腔粘膜の水疱性発疹(のどの奥などにぶつぶつができる)が特徴的です。熱は二日間ほどで下がることが多いのですが、のどの奥の水疱が破れるととても痛くなり、よだれが多く出たり、食事がとれなくなったりします。のどに沁みない、のど越しが良いもの、柔らかいもの、熱くないもの、酸っぱくないもの、辛くないものを食べさせてあげるのがよいでしょう。
手足口病はコックサッキーウイルスA16、エンテロウイルス71等による感染症で、水疱性の発疹が、口の中、手のひら、足の甲や裏に出ることが多いため、このように呼ばれています。流行するウイルスの違いにより、年によって、肘、膝、臀部などに発疹が出現することがあり、「昨年はおしり病、今年はひざ病が多いね」なんて小児科お医者さん同士で話をすることもあります。
手足口病やヘルパンギーナでは、稀に無菌性髄膜炎(ウイルス感染により脳や脊髄を包む髄膜に炎症が起こる)の合併があります。三日以上の発熱、頭痛、嘔吐を伴う場合は注意が必要です。
これら三つの代表的な夏かぜ以外にも、夏に流行するウイルス感染は、発疹が認められることが多いのが特徴です。しかし、発疹が出現するものでも溶連菌感染症や川崎病は必要な治療が違いますから、よくお医者さんに診てもらうことが重要です。
夏になると、とびひが流行ると聞きましたが、これも夏かぜですか?
もう一つ、乳幼児に夏に多くみられる疾患に、とびひ(伝染性膿痂疹)があります。黄色ブドウ球菌や溶連菌などの細菌による皮膚感染症です。虫刺され、あせも、けがなどの部位から始まり、広がっていきます。感染した菌が毒素を産生し、皮膚に水疱ができた後、表皮が破れていきます。水疱中の菌が飛んで次々と広がっていくので、とびひと呼ばれます。
皮膚を清潔に保ち、抗菌剤の外用(塗り薬)、内服(飲み薬)の併用療法を行います。アトピー性皮膚炎がある人は悪化しやすいので特に注意が必要です。皮膚が広範囲にやけどをしたように赤くなったり、大きな水疱ができたりするブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群という重症なタイプでは、入院して抗菌剤の注射や点滴が必要なこともあります。
院長のコラムが毎号紹介されている【母の友】の『こども健康相談室』より